発達の原則

「発達」ということを、なんとなくイメージとしては捉えているけれど、それはどういうことかを余り考えてみたことはないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今日は「発達の原則」について改めて確認してみましょう。

『イラストでわかる人間発達学/上杉雅之監修・医歯薬出版(株)』という本から、その一部をご紹介させていただきます。
太字斜体の部分が引用です。)


連続性

発達は直線的な階段状に起こるものでも、飛躍的に一足飛びに起こるものでもなく、誕生から死までの螺旋状の連続的で漸進的な過程です。


発達の指標となるマイルストーンを次から次へと完結的に獲得していくのではなく、例えば仰向けの状態での発達、うつ伏せの状態での発達、お座りした状態での発達や寝返りのような動き、上肢の機能なども同時に少しずつ発達していくように、ある段階で獲得した寝返りのような動きも、それ以外の動きが発達していく中でより巧みになっていくようなイメージかと思います。つまりある段階での「何かができた」で完結するのではなく、その他の機能や能力が発達していく中で、最初の段階の「できた」もその先へと進んでいたりする。これは、ナチュラリゼーションに取り組んでいらっしゃる皆さまは、きっとご自身のご体験と重なる面も多々あるのではないでしょうか。

順序性

発達は予測可能な一定の順序で起こります。胎児期から歩行獲得までには一定の順序があります。乳児は定頸(首のすわり)、寝返りをする、這う、座る、四つ這い移動、立ち上がる、立位をとる、歩くといった一定の順序を辿りながら歩行能力を獲得していきます。

手の機能や摂食機能などの微細(巧緻)動作の獲得、言語や社会性の発達においても、粗大運動の発達と同じように一定の順序がみられます。

方向性

発達には一定の方向がみられます。「頭部から尾部」あるいは「中心部から末梢部」などです。背臥位では頭部の正中位保持能力の獲得から始まり、生後4~5ヶ月で両手動作の獲得に至る正中位指向がみられます。腹臥位は生理的屈曲状態で、呼吸のための気道確保も困難な姿勢から始まり、頭部の挙上能力が発達して、頸部から腰椎下部へと抗重力伸展活動の発達がみられます。手の操作能力や下肢の分離運動の獲得過程においては、上肢は肩甲帯の安定性、下肢は骨盤帯が安定する時期を経たあとに、四肢末梢部の分離運動が獲得されます。そのほかには、「全身性から分節性へ」、「原始反射から高次の反応へ」、「従重力姿勢から抗重力姿勢へ」などがあげられます。


中心部から末梢部へと発達するのに、なぜ手のワークを最初の方で行うのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
後天的に身に付けた動きの癖や、生活の上で酷使されたりして手が硬くなっているということがよくあり、そうした末梢部の動きの制限があると肘や肩の動きを邪魔して自然で機能的な動きを獲得する上での妨げになってしまうので、最初に戻るだけでなく「余計なもの」を削ぎ落としていくプロセスも必要なのです。

異速性

発達の過程には一定のリズムがみられます。身体各部位の発達は、その速度が異なり遅速のリズムがあります。発達の変化は非連続とも思えるほどの急激な変化を示すときや、緩やかで止まっているように見えるときもあります。


「緩やかで止まっているように見えるとき」に焦らない、諦めない、待つということが大切ですね!停滞しているようでも、自分でも気付かないところで次の段階の新しい動きへの準備が進んでいたのだと、事後的に認識するようなことがナチュラリゼーションを続けていくとよく感じられます。

個人差

遺伝的にも環境的にも一人ひとり異なる人間の発達は、その違いが個人差となって現れます。

その他の発達の原則

発達の初期の混沌とした未分化な状態から分化した状態に進んで、次第にそれぞれの機能を発揮する状態に統合され、より複雑な全体を構成する「分化・統合の原則」、運動や心理、精神、社会性など、心身のすべての発達領域が相互に関連し合って発達していく「相互関連性の原則」、個体が主体的に環境に働きかけ、また環境から個体に影響を与えるように、発達が相互作用のなかで実現する「個体と環境の相互作用の原則」などがあります。

私たちは一応こうした過程を経て現在に至っているわけですが、その発達の螺旋階段の始まりに戻ってやり直すのがナチュラリゼーションです。


そして、螺旋階段の上部でああでもないこうでもないと模索していたけれどうまくいかなかったことにも、螺旋階段の最初の頃に戻ってやり直していってみると、そこに今の問いの答えや、課題の克服に繋がっていく「忘れもの」がこんな初期の運動学習の中にあったり、忘れものをしたまま過ごしてきたから、現在抱えているような問題が生じていのだと気付くことが多々あるのです。